千葉大みらい医療基金

急性リンパ性白血病に対する遺伝子改変iPS細胞由来NKT細胞を用いた免疫療法の開発

難治性急性リンパ性白血病の新しい治療開発を目指して

白血病は、血液細胞のがんです。血液中にある赤血球、血小板、白血球の血液細胞をつくる細胞ががん化し、がん化した細胞が増殖して正常な血液細胞が減少し、感染症にかかりやすくなったり、貧血になったり、出血しやすくなったりなどさまざまな症状が起こります。
急性リンパ性白血病(ALL:acute lymphoblastic leukemia、急性リンパ性白血病)は、リンパ球が未成熟な段階のリンパ芽球の状態でがん化し急速に増え続ける病気です。小児に多く、小児急性白血病の約8割がALLといわれています。

現在の治療方法と課題

急性リンパ性白血病は進行が非常に早い病気です。治療をしないと週単位で容体が変化していくので早急に治療を行います。治療の目的は、まずはがん細胞が観察できない状態である「完全寛解」の状態にすることです。ただし、寛解に入ってもがん細胞は残っているため、白血球細胞を徹底的に叩いておく必要があります。難治性な場合には抗がん剤による治療で体内の白血病細胞を減らしたあとに、提供者(ドナー)から採取された造血幹細胞という正常な血液を造る細胞を移植する造血幹細胞移植が行われますが、患者さんの全身状態や年齢、移植によって起こる可能性のある合併症のリスクなどをよく考えて、検討する必要があります。小児では治癒してからの期間が長く、晩期合併症と呼ばれる問題もあります。近年CD19-CAR (キメラ抗原受容体)T細胞製剤を用いた免疫細胞療法が開発され、患者さん自身のがんに対する免疫細胞を活性化しがん細胞への攻撃力を高めることでこれまで難治性であった患者さんでも80%以上が寛解するようになりました。しかし、長期的にはCD19-CAR T細胞の疲弊や消失により再発することが少なくありません。今後、どのように長期的に抗腫瘍効果を維持させるかが課題です。

iPS-NKT細胞で抗腫瘍免疫細胞を活性化

私たちが持っている免疫細胞の中に、NKT細胞があります。これはがんの殺傷能力が非常に高いと呼ばれている免疫細胞ですが、数が非常に少ないため治療に使うことができないということが問題点でした。しかし、iPS細胞の登場によりNKT細胞を体外でiPS細胞から培養して増やすことが可能になり、iPS-NKT細胞として治療に応用できるようになりました。そしてNKT細胞には他の免疫細胞を活性化させるという特徴があります。私たちはiPS細胞にCD19-CARを遺伝子導入することで、CD19-CAR iPS-NKT細胞を作成しました。NKT細胞がCD19陽性白血病を認識して白血病細胞を殺すことができるとともに、他の抗腫瘍免疫細胞を活性化することが期待されます。

今後の展望

CD19-CAR iPS-NKT細胞を用いることで、白血病細胞をこれまで以上に強力に攻撃する新たな免疫療法の開発を目指しています。本研究によって新たな治療開発ができると、これまで救うことができなかった小児の白血病の患者さんを救うことができる可能性があり、私たちは一日でも早く、治療という形で皆様の元へ研究成果をお届けるよう頑張ります。
この度はご寄付を賜りありがとうございました。大切に使わせていいただき、一歩一歩研究を進めて参ります。

この研究を支援する方法

千葉大みらい医療基金では、寄付をする際に寄付金の活用先を任意の領域や研究に指定することができます。この研究をご支援頂けます場合は、「免疫細胞医学」とご指定ください。

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