千葉大みらい医療基金

胃癌患者由来動物移植モデルを用いた胃癌の層別化と新規抗癌剤のin vivoでの評価

がんゲノムシークエンス時代のがん治療学の確立・最適医療の実現へ!

現在、がん遺伝子パネル検査が保険収載され、千葉大学医学部附属病院でも次世代シーケンサーと呼ばれる最新技術を使って、がんの患者さんのゲノム情報やがん関連遺伝子を一斉に調べることで診断や診療に活かしております。
「個別化医療」という言葉があるように、例えば同じ胃がんでも細かくタイプを分類すること、さらにそれぞれのタイプに合う治療薬を取り揃え、幅広い治療の選択肢を準備しておくことが重要だと考えています。私たちは、実際の患者さんの検体を移植したマウスモデルの作成、生体サンプルの保存(バイオバンク)、がんの分類、がんのタイプにあった治療薬の開発とその評価を今後のがん治療の発展における大きな軸と捉え、医学部、附属病院、薬学部が連携して「がん治療学」の確立を目指しています(下図ABCDEプロジェクト)。この度私たちは皆様にご支援頂いたご寄付を活用し、胃がんを遺伝子情報にもとづいて分類し、私たちが作成した新しい化合物(新規治療候補薬)の効果を確かめていきます。

胃癌患者由来動物移植モデルとは

研究私たちの目標は、どういったタイプのがんにどういった薬が効果的なのかを知ることです。胃癌は分子サブタイプで分類すると「E Bウイルス陽性胃癌」「マイクロサテライト不安定性胃癌」「ゲノム安定性胃癌」「染色体不安定性胃癌」といった4つのサブタイプに分類できます。サブタイプごとの新規化合物の効果を知るためには、実際の患者さんを対象にするではなく、患者さんの検体(腫瘍)をマウスに移植して、マウスの体内で腫瘍を観察する手法を取ります。これを、患者由来異所移植モデル(patient-derived xenograft:PDX)と呼びます。癌のタイプごとに効果的な薬剤スクリーニングを効率的に行うための手法です。元の腫瘍の性質や不均一性を維持しているので、効果だけでなく全身の副作用も観察することができます。

新規抗癌剤候補薬で癌細胞増殖抑制効果を確認!

胃癌は初期症状がわかりにくく、放射線治療に反応しにくいため一般的ではなく、手術で切除することが非常に多く、薬物治療に関する研究については他の部位の癌に比べて遅れているといえます。私たちの研究室では長年胃癌の研究をしており、薬学部と共同で胃癌に対する新しい治療薬候補となる新規化合物を開発しました。試験管内では既に癌細胞の増殖抑制効果が確認されています。

この化合物がどのようなタイプの胃癌にどのように効果があるのか、副作用について、今回の研究で明らかにしていきます。この化合物が試験管ではなくマウスの体内で評価されるのは今回が初めてになります。
本研究では腫瘍径が5mmとなったPDXマウスに対して4週間にわたって化合物を腹腔内投与し、その間、腫瘍径を測定することで抗腫瘍能を評価します。経過観察後に腫瘍組織を摘出し、評価します。また、各マウス個体の体重や行動様式の観察、腫瘍周囲の微小環境の染色像から全身性および局所性の副作用についても考察します。

見えない患者さんのために

私は実際に患者さんを治す臨床医ではなく、基礎医学者です。基礎医学者としての使命は「いかに早く良い薬剤が作るか」です。実際に患者さんを見るわけではありませんが、この研究の向こう側にいる多くの困った患者さんのことをイメージしながら、日々研究に取り組んでいます。少しでも早く、これまで救うことが難しかった人を救える未来が現実になるよう、医学部研究者一同使命感を持って取り組んでいます。基礎研究の面白さは、「新しい生命現象を自分の目で見ることができる」という点に尽きます。小さい発見の積み重ねが大きな一歩になり、患者さんを救うことにつながります。この度賜りましたご寄付を活用して、一日も早く、治療のお役に立てる研究成果を出したいと思っております。

この研究を支援する方法

千葉大みらい医療基金では、寄付をする際に寄付金の活用先を任意の領域や研究に指定することができます。この研究をご支援頂けます場合は、「分子腫瘍学」とご指定ください。

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