
肺癌は罹患率・死亡率共に高い難治性の癌であり、更に効果的な新しい治療方法が長年待ち望まれております。肺癌に特徴的な症状はなく、一般的な風邪に見られるような咳や痰、息苦しさ、胸痛などが挙げられますが、これらの初期症状から肺癌を見つけることは難しいので、定期的な検診が必要な癌です。
私たちは、強力な抗腫瘍効果(癌細胞への攻撃力)を発揮する自然免疫系リンパ球Natural killer T(NKT)細胞を用いた癌免疫療法を更に強化し、治療効果や適用範囲を拡大することを可能とすべく、新規抗体を用いた新しい免疫療法の開発に取り組んでおります。この研究により、より多くの方の命を守っていきたいと思っております。
がんの免疫療法はこれまで3大療法として知られていた治療法に加え、最近になって発展を遂げている新しい治療法です。3大療法とは主に薬物療法(化学療法)、放射線療法、外科手術の3つのことを指しますが、それぞれメリット・デメリットがあります。
NKT細胞はリンパ球の一種で、がんに対して強い攻撃力を持つことから、千葉大学病院ではNKT細胞を用いたがん治療の開発を行ってきました。実はこのNKT細胞は千葉大学の免疫学の研究者によって発見・確立されたものです。私たちの身体の中には少数(0.1%以下)しか存在しませんが、強い抗がん作用を有しています。直接がん細胞を殺すだけではなく、他のリンパ球の作用を高めて間接的にも抗がん作用を発揮します。このNKT細胞を実際の治療に応用して、がん患者さんの体内で増やす、あるいは身体から採血で取り出し試験管の中で増やしてがんに投与することで治療を行うのがNKT細胞によるがん免疫療法です。がん患者さんのNKT細胞を直接用いる治療法の実用化には、まだ数多くのハードルが存在しています。
NKT細胞は肺癌に対する抗腫瘍効果があることは分かってNKT細胞はいましたが、一定数、効果がうまく発現しないこともあったため、私たちはより「強力」なNKT細胞を作る必要があると考え、今回の研究を始めました。少し難しい話になりますが、NKT細胞の活性が低い白血病細胞株に対し、特別な抗体を低用量添加すると、細胞傷害活性(癌細胞への攻撃力の活性)及びIFNγ(免疫細胞を活性化させるタンパク質)の産生量が劇的に向上するという現象を見つけました。
このことを応用して新規抗体とNKT細胞療法を組み合わせるとより強力な癌免疫療法ができるのではないか?という仮説に基づいて研究をしています。
千葉大みらい医療基金では、寄付をする際に寄付金の活用先を任意の領域や研究に指定することができます。この研究をご支援頂く場合は、「免疫細胞医学」とご指定ください。