千葉大みらい医療基金

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新型コロナウイルス感染症の重症化メカニズムを解明―新たな重症化予測マーカーの同定―

掲載日:2022/08/02

 千葉⼤学病院(病院⻑:横手幸太郎)は、千葉⼤学⼤学院医学研究院免疫発生学の研究グループ(中⼭俊憲前教授(現 千葉大学長)、平原潔教授、岩村千秋特任講師ら)とともに、2020年7⽉から取り組んでいる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化メカニズムを解明する臨床研究の成果が、このたび、国際医学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌(⽶国東部標準時間7⽉27⽇付)のオンライン版に掲載されましたので、ご報告いたします。
 本臨床研究は、千葉大学病院ならびに千葉県内の7つの協⼒病院、順天堂⼤学医学部附属順天堂医院、藤田医科⼤学病院、札幌医科⼤学附属病院において、研究への参加に同意した患者さんよりご提供いただいた肺組織検体と血液検体を用い、産業技術総合研究所、DLC研究所と提携して進められました。

今回、明らかになったことを以下にまとめます。

1. COVID-19で亡くなった患者さん(8例)の肺の血管の周りに浮腫を伴った滲出性血管炎が起きていた。

2. 滲出性血管炎を起こした血管には感染した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が多数観察された。

3. 肺血管は傷つき、その内腔には血栓が形成され、血栓には血小板成分の1つであるMyl9(ミルナイン)というタンパク質が多量に沈着していた。

4. そこで、COVID-19の入院患者さん(123例)の血液を解析したところ、血中のMyl9濃度が上昇しており、COVID-19患者の重症度とその後の入院日数と相関していた。

5. 血中のMyl9濃度がCOVID-19の重症化判定および予測マーカーとなることがわかった。今後、血中のMyl9濃度の測定が重症度判定およびその後の病勢の予測に有用であることが示唆された。

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本臨床研究の成果の概要(COVID-19重症化機構)

 本臨床研究では新型コロナウイルスが肺の血管へ直接感染することで引き起こされる血管傷害が、血栓形成の原因となり、それに伴って放出されるMyl9が、COVID-19の重症化判定および予測マーカーとなることを明らかにしました。
 COVID-19 からの回復期には心血管疾患の発症リスクが増加することから(Nature Medicine. March (2022))、現在社会で大きな問題となっているLong COVID患者の病態評価に本研究成果が応用できる可能性があります。
 今後、血中Myl9濃度の簡易測定キットの開発や、Myl9を標的とした新規治療法の開発を、企業と連携し行うことで、社会に貢献できると考えています。さらに、本研究チームはヒトへの投与が可能なMyl9に対するヒト型抗体の作成に成功しており、実用化に向け、開発研究を着実に進めています。

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