

RNAシークエンス・ChIPシークエンス解析費、細胞培養液購入費
ウェルナー症候群(以下、WS)は、WRN遺伝子の変異による遺伝性早老症です。思春期以降から白髪や脱毛、白内障や筋肉の萎縮、動脈硬化など、加齢に関わるさまざまな症状が急速に進みます。WSは成人以降に老化兆候が加速する唯一の遺伝性早老症であり、ヒトの老化のモデル疾患と考えられています。ほとんどのWS患者さんは、40歳未満から手足の筋肉が著明に萎縮し、筋力が低下し、サルコペニア(加齢により筋肉量が減り、筋力や歩行速度が低下している状態)となります。

本研究では、WS-iPS細胞を骨格筋細胞に分化誘導し、WS患者さんがなぜ早期からサルコペニアになるのかを明らかにし、一般老化におけるサルコペニアの治療につなげることを目指しています。

サルコペニアは転倒や骨折、入院につながり、死亡リスクを高めることが知られています。WS患者さんにおいてもサルコペニアは日常生活の活動や質を損ねる深刻な問題です。
私たちの研究室では、これまで複数のWS患者さんにご協力いただき、血液から体細胞由来iPS細胞(WS-iPSC)を樹立して参りました。また、CRISPR/Cas9という遺伝子編集技術により、原因遺伝⼦WRNを修復したiPS細胞株を樹⽴し、老化メカニズムの解明に取り組んできました。
今回私たちは、WS-iPS細胞を骨格筋細胞に分化誘導し、WS筋細胞を作成することに成功しました。遺伝子・蛋白発現の解析、遺伝情報を網羅的に解析する手法により、WS筋細胞では老化や炎症に関わる遺伝子発現が上昇し、筋分化や筋収縮に関わる経路が抑制されていることがわかりました。さらに、WRN遺伝子を修復したiPS細胞から分化誘導した筋細胞では、これらが改善することが明らかとなりました。
一方で、なぜWS患者さんは、WRN遺伝子の変異のみによりサルコペニアになるのかはわかっておらず、サルコペニアに関わる分子や治療法は見つかっていません。
私たちは、タンパク質を網羅的に解析する手法を用いて、WS患者さんや高齢者の血液では老化やサルコペニアに関わる、特定の蛋白質の発現が増加していることを見出し、その働きを抑えることでWS筋細胞の筋萎縮が改善することを発見しています。この分子を標的として、サルコペニアの早期診断や治療に結びつけたいと考えています。また、WRN遺伝子は加齢に伴いその発現が低下してくることがわかっています。なぜWRN遺伝子の変異のみでサルコペニアになるのかを突き止めることは一般老化のサルコペニアの治療法確立にも有用だと考えます。多くの皆様の健康に少しでもつながる研究ができるよう、取り組んで参りたく存じます。
この度、大変多くの皆様のご支援、ご寄付の下で研究を続けることができました。誠にありがとうございます。本研究を患者さんや社会に還元できるよう、励んで参ります。

千葉大みらい医療基金では、寄付をする際に寄付金の活用先を任意の領域や研究に指定することができます。この研究をご支援頂けます場合は、「内分泌代謝・血液・老年内科学」とご指定ください。