

喘息等好酸球性炎症の気道上皮細胞による誘導メカニズムに関する研究費用
近年、増加の止まらないアレルギー疾患のなかでも、気管支喘息は本邦において100万人以上の罹患者数があり、かつ生命の危機に直結する重い疾患であります。これまでアレルギー疾患においては、免疫細胞による炎症の誘導機構についての研究が盛んに行われ、いかに免疫細胞同士の相互作用を阻害し炎症を抑えるかという観点から、治療標的の創出に寄与してきました。しかし現行の治療にも抵抗性を示す患者様は存在し、喘息死や重症化により日々息苦しい症状が続く方への治療戦略が、確立できたとは言い難いのが現状です。
一方で、空気中のアレルゲンが呼吸により吸い込まれ、最初に体内で接触する組織は、粘膜を構成する気道上皮細胞になります。気道上皮細胞は皮膚と同様にこれまで単純な防御壁という認識でしたが、しかし10種類以上に及ぶ、他の臓器では類を見ないほど多種多様な上皮細胞が存在することがこれまでの研究からわかってきました。その気道上皮細胞がアレルギー性炎症の発症にどのように関与し、どう免疫細胞に働きかけるのか、を解明することで免疫細胞を誘導する最初のトリガー機構の解明につながることが予想され、現行の治療薬に対する抵抗性メカニズムの解明や、治療基盤の創出に寄与することが考えられます。
多様な気道上皮細胞のうち、私たちの研究チームでは、肺神経内分泌細胞(略称: PNECs)という細胞に着目し、研究を行っています。この細胞は名前の表す通り、神経と直接接続し、非常に多彩な内分泌物を放出することが知られている細胞になります。つまり外界からの刺激に反応し、神経を介して脳へ情報を伝達するセンサーとしての役割と、内分泌物を介した他の細胞へのシグナル伝達の役割を担っていることがわかってきました。これはPNECs特有のもので、他の気道上皮細胞とは全く異なる性質を示していますが、アレルギー疾患において、このPNECsがどのような働きをするかはほとんど分かっていませんでした。
私たちのこれまでの研究成果から、PNECsがタンパク質Xを分泌し、これが好酸球性炎症、特に好酸球が破裂して自身の核タンパクを放出して、アレルゲンや病原体を絡めとる”EEtosis”という現象を誘導することが分かってきました(図1)。このEEtosisというのは重症な気管支喘息や、その他の好酸球性の呼吸器疾患で見られることが知られていることから、このタンパク質Xがどのように好酸球に作用するか、その受容体の特定と、受容体に作用することでどのようなシグナル経路が活性化されてEEtosisへと向かうのか、そのメカニズムを解明し、好酸球性炎症病態の解明と、創薬基盤の確立が本研究の目的となります。

気管支喘息の治療がこの50年、吸入副腎皮質ステロイド薬であるということは、機器の進歩を除き、全く変わっておりません。これに追加する形で、単一の分子を標的とした、効力が高く、副作用の少ない注射製剤(分子標的治療薬)が開発されてきましたが、月に1,2回程度の注射が必要であり、非常に高額な医療費がかかるという難点が存在します。今回の私たちの発見をもとに、好酸球性炎症やEEtosisを防ぐ分子学的な解明を推進することで、分子標的薬の開発のみならず、新たな吸入薬の創出に寄与するものと考えております。
気管支喘息を含めた、肺・気道での好酸球性炎症に対して、安価で副作用が少なく、病態に対し選択的に効力を発揮する治療薬であり、かつ喘息死や毎日の咳や呼吸困難から患者様を開放する治療薬の開発につながる研究をこれから益々、推進していきたいと思います。

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