

1細胞レベルでの網羅的な遺伝子発現量解析におけるライブラリー作成試薬および、組織学的解析に用いる試薬、マウス購入などに助成金を用いる。
近年の新型コロナウイルス感染症の流行は、感染症が現代社会においても大きな脅威であることを改めて示しました。人類は歴史的にさまざまな感染症と向き合っており、その重要な対策の一つに「ワクチン接種」があります。ワクチンは、病原体そのもの、あるいはその一部を体内に取り込むことで、事前に免疫を獲得しておく仕組みです。これにより実際に病原体に感染した際には、免疫応答が迅速に行われて重症化を防ぐことができます。今後の感染症対策をより強固なものにするためには、より簡便で、多くの人が利用しやすいワクチン技術の開発が重要だと考えています。
食道はこれまで「食べ物の通り道」としてのみ考えられてきた臓器です。しかし私たちの研究により、食道の粘膜には多くの免疫細胞が存在し、外部の抗原を取り込む能力を持つ可能性が明らかになりました。この特徴に着目し、食道粘膜を利用した新しいワクチンの可能性を探ることが本研究の目的です。
現在用いられているワクチンには主に3つの投与方法があります。1つ目は最も一般的な「注射型」ですが、医療従事者による接種が必要で時間や場所が制約されるほか、痛みに対する心理的負担も無視できません。2つ目は、鼻に噴霧して吸入する「経鼻ワクチン」です。近年実用化されていますが、専用のデバイスが必要で、乳幼児や高齢者などうまく吸入できない方が一定数存在します。3つ目は、腸で吸収される「経口ワクチン」です。ただし、腸へ到達するまでに消化酵素の影響を受けるため、十分な効果を得ることが難しい場合があります。
これらの課題に対し、私たちは食道での吸収を利用したワクチン投与に注目しています。食道をターゲットにできれば、飲み込むだけで接種が可能となり、場所や年齢を問わず、幅広い層にとって利用しやすいワクチンが実現する可能性があります。また、食道は消化酵素の影響を受けにくいことから、多様なワクチン設計にも対応できる可能性があります。


食道粘膜を利用したワクチンが実用化されれば、ワクチン接種のハードルは大きく下がり、より多くの人が容易に予防策を取れるようになります。その結果として、社会全体の感染症耐性が高まり、公衆衛生の向上に寄与することが期待されます。さらに、この食道を介した投与方法は、ワクチンにとどまらず、アレルギー治療薬やその他の薬剤に応用できる可能性があります。「飲むだけで高い効果が得られる新しい薬物投与経路」という、これまでにない治療選択肢を切り開く可能性を秘めています。
新しいワクチンの開発に向けて大切に活用させて頂きます。皆様の思いを形にできるように精一杯頑張ります。

千葉大みらい医療基金では、寄付をする際に寄付金の活用先を任意の領域や研究に指定することができます。この研究をご支援頂けます場合は、「消化器内科」とご指定ください。